「クリスマスの真実」
(Original Title:THE TRUE WORD IN XMAS BLESS)


出典:MEE-NA's Page
(http://www.geocities.com/passto2000/Main.html)

作者:MEE-NA
訳者:alpha7

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このファンフィクションの全ての出来事は原作マンガを参考にして
います。
アニメ・劇場版とは関連は有りません。
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三原千春は公園のベンチに座り、人を待っていた。
今日はクリスマス、彼女の人生で17回目のクリスマスである。
彼女は手にしている紙袋を見つめた。
紙袋の中には、深紅色で緑のリボンで縛られた贈り物が入っていた
のである。その紙袋はクリスマスプレゼントだったのだ。

深紅色、それは彼のお気に入りの色であった。それゆえ、彼女はこ
の色を選んだのだ。
彼女は、このプレゼントを作る為、何ヶ月も費やしてきたのだ。
彼女は友人の佐々木利佳ほど手先が器用では無かったが、彼女は利
佳のアドバイスを受け、遂に、このプレゼントを自分の手で作り上
げたのであった。

幸せそうな笑いが彼女の顔に浮かんだ。千春はプレゼントをそのま
まにしておきたい様なごとく、紙袋をギュッと抱きしめた。
プレゼントは、とても暖かく感じられた。

彼女は彼が、これを受け取ったら、どんなリアクションを取るかと
考え、再び笑いを浮かべた。
驚くだろうか?
このプレゼントを気に入ってくれるだろうか?

彼女は街の明かりで、オレンジ色に彩られた街の空を眺めた。

気温が下がっていた。
その為、頬が冷たくなっていた。
彼女はコートを着ていたが、体を暖めるには至らなかった。
更に、冬の風が彼女の体から熱を奪っていたのである。

どうして、彼は遅れているんだろ?
千春はそう考え、しかめ面をして、腕時計を見つめた。
そして、約束の時間から一時間も前に公園に来ていた事に気がつい
たのであった。
彼女は焦っていたせいか、時間を確認する事を忘れていたのである。
そんな訳で、こんなに早く公園に来ていたのだ。

そんな自分に、彼女は笑いを浮かべ、笑顔のまま溜息をついた。
今日は、彼女にとって特別な日であった。
なぜなら、自分の気持ちを彼に告げようと決心していたからだ。
幼い時から、彼女は彼と付き合っていたが、彼女は自分の気持ちを
彼に告げる事は無かったのだ。
しかし、今日こそ、彼女は告白しようとしていたのである。

千春は混乱していた。
もし、自分が彼に気持ちを伝えたらどうするだろう?
ここ2〜3カ月の間、千春は彼に会う事が出来なかった。
と言うのも、彼が自ら、どこかで働いている、と言っていたからだ。
千春は自分の気持ちを彼に告げたくても、それは難しかったのである。
彼は李君や柊沢君の様に、始めて日本に来た人でも、いつも打ち解け
て来た。
更に、2人と始めて仲良くなったし、面倒も見てきた。
昔を振り返ってみると、彼には思慮深い所があったが、そんな事よ
り、彼女の関心事は以前、プレゼントを渡した時の一言と、そのプ
レゼントにまつわるエピソードであった。

10歳の時、彼女は彼にテディベアを贈った事が有った。
友人の大道寺知世から聞いたテディベアの話....もし、相手の名前を
付けたテディベアを贈れば、その人とずっと両想いでいられる
と言う話であった。それを聞いて、彼女は彼の為にテディベアを作り、
自分の名前を付けてくれる事を期待したが、あろう事か、自分の好
きな食べ物の「すあま」をテディベアの名前とし、更に「すあま」
について「うんちく」を始める始末であった。
[訳者注1]
それに対し、彼女は酷く怒った。
彼の頭の中はどうなっているんだろ?と。

彼女は混乱しそうにだったので、頭を振った。
彼女は決心していた。
如何なる困難も自分の決心を揺るがせるものでは無い、そう自分に
言い聞かせてきた。神にも祈った。
彼女は今日、事がうまく行くようにしたいと考えていた。

そんな事を考えていると、男性の声がした。
「やあ、千春ちゃん!」

声の方に振り返ると、小走りで自分の方に近づき、右手を振ってい
る自分と同い年位の笑っている少年がいた。
彼は首にスカーフを巻き、ジャケットをはおり、背中には茶色の
ナップサックを背負っていた。

「山崎君。」
千春は立ち上がった。
彼女は胸の高鳴りを感じていたが、彼に笑いかけていた。

「僕より前に来たの?僕、時間通りだと思ったんだけど。」
山崎は自分の腕時計を見つめた。

「少し、早く着いたのよ。」
千春が答える。

「エッ!早く来るなんて変だなァ。今日は、とっても寒いって事
分かってるんだよ。」

「私が何時も遅れて来る、って言ってるの?!」
千春は怒りに駆られた。
彼女は彼の首根っこを掴み(無論、弱くであるが)、彼を揺さぶった。

「あははは。」山崎はただ笑うだけだった。
彼女の方も、からかわれる事をいつも楽しんでいたが。

彼の首に彼女の指が触れると、寒さのせいか、彼女の指が冷たくな
っているのが、山崎に伝わった。彼女は冷え切ってしまっていたのだ。

彼は首に巻いているスカーフを緩めると、それを自分の首から外し、
千春の首にかけてやった。
その為か、驚いた事に彼女の怒りは消え去ってしまった。

「あ....ありがとう。」
千春は赤面し、眼差しを和らげた。
彼は、彼女に何時も良く尽くしてくれていた。

山崎は、千春の立っている脇に紙袋が有る事に気がついた。
「千春ちゃん、その紙袋、君のなの?何なのかなァ?」
彼が尋ねた。

<気が付いたんだ!>
千春は紙袋を取る為に素早く振り向き、紙袋をギュッと握った。
彼がプレゼントに驚いてくれる事を望んでいたが、プレゼントを開
ける時間では無かったし....まだ、プレゼントを渡す時間では無か
ったのだ。
彼女は秘密を隠す様に笑いを浮かべた。
「後で、分かるわ。」

山崎は少々、困惑した表情で彼女を見つめた。
だが、彼は、その事にはそれ以上触れなかった。
(もし、彼女がその事に付いて今、話してくれなくても、彼は彼女
がその事を話してくれるまで、待ってくれたであろう。)

「行く時間だね。遅いから、東京タワーは多分混んでいるね。行け
るかい?」
彼は彼女に尋ねた。

「うん。」
千春は元気良く頷き、彼の左手を掴み、彼の脇に寄り添って歩き始
めた。

今日の東京タワーは夜までオープンしていた。
今日はクリスマスの為、特別にいつもの閉館時間を過ぎてもオープ
ンしているのだ。[訳者注2]
東京タワーの展望台は東京の有名な場所や、最良の情景が見れる所
であったし、そこから見た東京は明瞭で美しいものであった。
彼女は、そこから見た東京はとても優雅で美しいに違いない、と確
信していた。それゆえ、そこに行きたいと思っていたので、彼に一
緒に行かないか、と尋ねてみた。
すると、彼はその事に同意したのだ。

東京タワーへの道を歩きながら、千春は光輝く道の途中で、クリス
マスツリーや、サンタ人形、天使の人形、星の飾り、店頭に飾られ
たリボンや花を眺めていた。
そして、そこには男女のカップルも歩いていた。

千春は山崎を見つめ、どうしてクリスマスツリーの上に大きな星の
飾りが飾られている理由や、クリスマスツリーを栽培するのに適し
た土壌について、そして、それらが話し終わると、土の下にモグラ
がどうしているのか、について話を始めた。
彼女自身、彼とこんな風に手を組んでいる事を不思議に思っていた。
又、自分達が、他のカップルと同じように見えるかな?とも考えて
いたのである。

彼女は彼の腕に寄り添った。笑いかけると、彼も同じように笑い返
した。彼女は彼と一緒に居ると何時でも幸せを感じていた。
彼女に前から分かっていた事であるが、彼と....ずっと一緒に居た
い、と思っていたのだ。それは、全ての少女の願い....愛した人と
一緒になりたい、と言う....でもあったのだ。

彼女は道端で花を売っているブースを見つけた。
そのブースは青のネオンで飾られて、とても美しいものであった。
彼女はそのブースに飾られている絵を見て笑った。それは、今日の
東京にふさわしいものであったからだ。
それを見ながら、彼女は溜息もついた。

ブースを見つめていると、山崎は千春と組んでいた腕を外そうとし
ていた。
そこで彼女は現実に呼び戻された。

「一寸待っててね。」
山崎はそう言うと、優しく彼女の腕を外し、ブースの方へ走って
行った。

「山崎君、待って!」
困惑した表情で千春は叫んだ。
どうしたんだろ?そう千春は考えた。

千春は売り手から何かを受け取り、ブースの前に立っている山崎を
見つめていた。売り手は笑い、彼にお辞儀をした。そして、彼は走
って彼女の元に戻って来た。彼は手にピンクの薔薇の花束を持って
おり、その束には金色のリボンの飾りが付いていた。

「これ、君に。」
山崎は千春に薔薇の花束を手渡した。

「えっ?」

「これ、欲しかったんでしょ?」

「え、山崎君!」
千春は笑わずにはいられなかった。
彼は自分が花が欲しい、と考えており、それを実行に移したので
あった。彼女は彼から薔薇を受け取り、彼を見つめた。

「知ってるよね。ピンクの薔薇の歴史ってのはね---。」
山崎は話を始めた。

「ハイ、ハイ。」
千春は彼の話を遮り、そのまま、東京タワーの方へ引きずって行っ
たのであった。

東京タワーの大展望台[訳者注3]に着くと、山崎の予想通り、混ん
でいたが、そこからの光景は価値あるものだった。
その光景は、まるで、眼下に広がる夜空の様であり、東京の街が深
い闇に覆われ、街の光は、まるで天の川の中で光る光の様であった。

千春はここに来る事が出来た事を嬉しく思っていた。
と言うのも、自分が考えていたのと同じ位、素晴らしいものだった
からだ。
山崎の方は東京タワー建設の歴史について延々と話をしていたが、
彼女は彼と一緒にここに来れた事も嬉しく思っていた。

東京タワーを出ると、2人は夕食を取る為、近くのカフェに向かっ
た。そのカフェは大きな所では無かったが、洒落た場所であった。
そこで、2人は同じ料理を注文したのだった。

その後、2人は家に帰る時間になる前に、その辺を少々ぶらついて
みよう、と言う事になった。

2人は並んで歩いていたが、やがて、2人が待ち合わせた公園の所
まで歩いてくると、千春は立ち止まった。

「ン?どうしたの?」
山崎が尋ねた。

「わ....私、ここで休みたいの。暫く、ここのベンチに座らない?」
千春は公園のベンチを指さした。

山崎は彼女に、まごついた表情を見せたが、「オッケー」と答え、
2人はベンチに腰掛けた。気温は益々低くなっていた。
千春は、山崎が話を始めると、自分の紙袋をギュッと抱きしめた。

「あのね。知ってる....。」

「山崎君。」
千春はためらいがちに彼の名前を呼び、彼の話を遮った。
彼女の心臓の鼓動は耳でも聞こえる程、高鳴っており、赤面してい
たのである。

「ハイ?」
山崎が答える。

「今日....今日は、とっても楽しかった。ありがとう。」

「喜んでくれて、嬉しいよ。」

彼女はうつむいて、紙袋を彼に手渡した。
彼女は彼の顔をまともに見る事さえ出来なかった。
「これ。」

「紙袋?」

千春は頷いて言った。
「クリスマスプレゼントよ。」

「ありがとう。開けてもいいかな?」
紙袋を開け、プレゼントの包みを外しながら尋ねた。
包みを開けると、そこには深紅色の手作りの衣服が入っていた。
「セーターだね。」

「私が作ったの。利佳ちゃんに教えて貰ったんだ。」

「こんなの作ったなんて、信じられないなァ。」
彼はからかい半分に言った。

「どういう意味よ?!」
再び彼女に怒りがこみ上げていた。
どうして、良いムードをぶち壊しちゃうのかしら?

「ありがとう、千春ちゃん。このセーター、大切にするよ。」
彼は、彼女に笑いかけ、しっかりとした口調で言った。

彼女の怒りは消えていた。
彼女の顔は幸せで光り輝いていた。
今日は全ての事が上手く、本当に上手く運んでいた。
自分の気持ちを伝えるのであれば、全く申し分無かった。

千春は再び赤面していた。
彼女の心臓の鼓動は耳でも分かる程、高鳴っていた。
「や....山崎くん。」

「何だい?」

「わ....私....。」
千春は躊躇った。
どうして、自分の気持ちを言うのが、こんなに大変なの?
と、千春は考えた。
彼女は気持ちを言おうと、再度、決心を固めた。
言うんだ!

一方の山崎の方は、彼女が何か言うを待っているだけで、
彼女に笑いかけるだけであった。

「私....」
千春は勇気を振り絞り、顔を上げて、彼の目を見つめた。
「愛してる。山崎君....」
彼女はしっかりとした口調で言った。
彼女は目を閉じた。そして、息がつまりそうになりながらも、山崎
のリアクションを待っていたのである。

山崎は口をポカンと開けていた。
彼は何もリアクションも取れず、だた沈黙が過ぎて行くだけだった。

千春にとって、その沈黙は100年もの時間が過ぎているのではない
か、と思えるものだった。
何かおかしな事を言ったのかしら?
彼は、黙ったままであった。
彼が何もしない....と言う事は、自分の気持ちが伝わっていないの
かも?
お願い、山崎君....何か言って....
千春は言葉もかけず、彼に僅かな期待をかけた。
そして、何かリアクションを待っていたのだ。
だが、2人の間の沈黙は続いていた。
千春は待って、待っていた....
彼のリアクションを....

「アハッ!」
自分の左の拳を、右の手のひらに当て、山崎の方から、沈黙を破った。

アハッ?
千春は彼のそんな声にカチッと来た。
彼女は困惑に満ちた顔で彼を見つめた。
彼女が彼に何らかのリアクションを期待してはいたが、それが「ア
ハッ」と言う一言だったのだ。
まさか、そんな答が返ってこようとは、彼女も予想だに出来ない事
だった。

「ねえ、夜に聞かせる物語知ってる?それを、夜、特にクリスマス
の夜にすると、サンタの妖精に会えるんだよ。」
彼は話しを始めた。
「あ!サンタの話をしようか。コロンビアのサンタの歴史、知って
る?これはね---。」

千春は山崎をジッと見つめていたが、頭の中は真っ白であった。
そんな彼女を尻目に、山崎はコロンビアのサンタの歴史について
延々と話をしていた。
さっきの沈黙の間、話を作っていたのかしら?
彼のリアクションはいつもこんな風、いつも!

「どうして!貴方は!」
彼女は自分の感情にまかせて、彼の首を窒息しそうな程強くしめ、
彼を揺さぶった。
自分が彼への想いを告白するのは、大変であったが乗り越えてきた!
でも、彼のリアクションはいつもこう....いつも....

最後には、千春は彼の首から手を離した。
彼女の視界は水をかぶった時の様にかすんでいた。
彼女は泣いていたのだ。
ああっ、神様!
彼女は心の中で泣いていた。
今日は本当に良い日だったのに、今じゃ最悪。
どうして?どうして?

「それで、クリスマスの夜に想いを告白する物語って知ってる?」
山崎は続けた。

<今度は何を言ってるの?!もう十分よ!そんな話、もう聞きたく
無い!>
正に、彼女は打ちしがれていたのだ。そして、ベンチから立ち上が
り、彼の元を離れて行った。
これ以上、彼の気持ちを聞こうなどと言う気にはなれなかった。
又、彼の方向に振り向く事は無かった。と言うも、彼女の目からは
涙がこぼれていたからである。

「--こう言われてるんだよ。もし、女の子が男の子に気持ちを告白
するんだったら、クリスマスの夜、つまり、一年に一回は男の子は
告白した女の子に真実を言うらしい、って。」

千春は立ち止まった。
彼は彼女の背中を見つめていた。
彼、何て言ったの?
彼女はそう考えた。

山崎は彼女に近づいた。
彼は彼女と顔がハッキリ見える位の距離を取って立ち、彼女の目を
見つめた。彼の表情は、それ迄、彼女が見たことも無い程、真剣な
ものだった。

彼は、彼女の涙を拭く為、ハンカチを取り出した。

彼女は混乱していたし、彼の言った事に呆然としていたので、山崎
を呆然と見つめる事しか出来なかった。

彼は今日ずっと背負っていた茶色のナップサックを下ろし、その中
から彼女のお気に入りの色である黄色の紙の包みを取り出した。

「これ、君へのクリスマスプレゼント。」
包みを渡しながら、山崎は言った。

千春は彼から包みを受け取って言った。
「あ....ありがとう。」

「開けてみて。」

「うん。」
千春は頷いた。

千春は包みの中身を探りながら、包みをゆっくりと開けた。
それは、手作りのテディベアであった。
テディベアは古い物の様であったが、キチンと手入れされ、良い状
態であった。

「このデディベアの名前、何にしようか?」
彼は矢継ぎ早に彼女に尋ねた。

「や....山崎君。」
彼女はテディベアを貰ったと言う事で驚きながら、彼を見つめて言
った。

彼は彼女に笑いかけた。
「前に僕が『千春』って、テディベアに名付けて欲しかった本当の
意味をずっと前に大道寺さんから聞いてて知ってたんだ。それで、
僕ね、これを作ったんだ。君に貰って欲しくってね。でも、君が貰
ってくれるか確信が持てなかったし。」

<あの後、私に『千春』って言おうとしてたのかしら?>
千春は驚いていた。そして、その驚きを彼女は解消しようとしてい
た。
「山崎君。」

「ハイ?」

「何故、あの時、私があげたテディベアの名前を『千春』じゃなく
て、『すあま』って名付けたの?」

山崎は顔を上げて言った。
「僕が『千春』じゃなくて、『すあま』って名付けたの?」

「ええ、そうよ。」
彼女は断言した。

「エッ?僕がそうしたって?テディベアに『すあま』なんて名前付
けた事なんか覚えてないよ。」
山崎は答えた。

千春は唖然とした。
<本当に忘れてるみたい!何で--->

暫く時間をおいて、彼女はあの時のテディベアを『千春』と名付け
ている事を確信したのであった。そして、彼があの時のテディベア
を『千春』と名付けた事を考えると、彼女の表情は和んで行ったの
である。

千春は彼から貰ったデディベアを胸の中にギュッと抱きしめ、そし
て言った。
「このテディベアの名前は『貴史』よ。」

山崎は幸せそうな笑いを千春に投げかけた。
そして、小箱を取り出し、それを彼女に手渡した。

「エッ?山崎君、何?」
千春は物珍しそうに尋ねた。

彼は小箱を開けた。中には、プラチナのネックレスが入っていた。
「暫くの間、僕、バイトしてたんだ。これを君に贈りたくって。」

彼が、自分の首にネックレスをかけてくれている間、彼女は彼の
(珍しく)大きく見開かれた目を見つめ、そして、言った。
「や....山崎君。」

彼女の首にネックレスをかけ終わると、彼は言った。
「今夜はクリスマスだよね。千春ちゃん、一年に一回だけ、僕、本
当の事を言うよ。愛してる。時間、かかちゃったけどね。僕も分か
っていたんだ。君を愛してる、って事がね。」

千春はその言葉に衝撃を受けた。
彼は、その言葉を真剣に言っているのだ。
彼も、自分を愛してる、と。

千春の目から、涙が止めどもなく流れて来た。
千春は彼に寄り掛かると、しっかりと抱きついた。

「愛してる。山崎君。」

「愛してる。千春ちゃん。」

暫く間を置いて、雪が降ってきたのであった。
純白の雪は、まるで、地上に住む全ての生きる物に対する天からの
贈り物の様であった。
2人はお互いを見つめ会う為に振り返った。
2人の目は愛に満ち溢れ、冬の風に乗って聞こえるクリスマス・
ソングを聞きながら笑っていた。

「メリークリスマス。千春ちゃん。」
山崎がそう挨拶した。

「メリークリスマス。」
千春もそれに答える。

2人は、手を組み、並んで歩き出し、お互いに笑っていた。
今日は2人にとって、これまでのお互いに費やして来た時間で「良
き日」の始まりの日になったのであった。

------終わり------
2000年11月9日
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Mee-Naの独り言:

ハイ、読者の皆さん。

この作品はY&C(山崎と千春)のクリスマスストーリーです。
私は今まで、沢山のさくら&小狼のファンフィクションや、その他
のCCSのカップルのファンフィクションを見てきました。

でも、不思議な事にY&Cの作品は、私に関する限り、何故か見あた
りませんでした。彼ら2人も又、可愛いカップルなんですが、この
2人はCCSの主要キャラで無いと言う事が、心の中で引っかかって
いました。+_+'
それゆえ、私はこの作品を書くにあたり、彼ら2人以外のCCSの
キャラを考慮しませんでした。しかし、私はこの作品を気に入って
くれる事を願って止みません。

読者の皆さん、思う所があれば、私に教えて下さい。
お分かりとは思いますが、私は皆さんがコメントや補足を送ってく
れなければ、知る事が出来ませんので。
又、アイデアの交換も悪くないですね。^_^

バイバイ
お体を大切に。
貴方に神のご加護を....

Mee-Na

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(訳者あとがき)

[訳者注1]
コミック「カードキャプターさくら」第8巻参照。

[訳者注2]
クリスマスと言っても、特別に東京タワーの閉館時間が遅くなる、
と言う事はありません。
クリスマスである12月25日は通常の20時に閉館します。
(これはあくまでもフィクションですので、その辺は大目に見て
下さい。)
尚、8月中は通常より閉館が1時間遅くなり、21時に閉館します。

[訳者注3]
原文を見る限り、地上150m地点にある「大展望台」か、地上250m
地点にある「特別展望台」かハッキリしませんが、混んでいる、
と言う事から判断して「大展望台」としました。

翻訳完了:2002年1月12日
訂正:2002年1月13日

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Created by alpha7 at January 13,2002