「愛の告白」
(Original Title:Feelings Revealed)


出典:Fanfiction.Net
(http://www.fanfiction.net)

作者:Felipe S. Kai(ブラジル連邦共和国)
訳者:alpha7


その日はとても美しい日であった。
季節は春、太陽は空にさんさんと輝き、木々も輝いていた。
花は様々に彩られていた。
赤や黄色の花々は、まるで太陽のようだったし、青の花々は、まるで海のような青さであった。
そんな中、三原千春は穏やかに友枝町のメインストリートを歩いていた。

「5月も、もう終わりだなぁ。」千春は考えた。
「すぐに、山崎君の20回目の誕生日だね!私の親愛なる山崎君の!」

今日は528日、次の月の最初の日には、山崎貴史は20歳の誕生日を迎える事になるからだ。
そして、千春は山崎の為に何か特別なものを贈ろうと考えていた。
とは言え、主な目的は自分の本当の気持ちを彼に伝える事であったが。
彼ら2人共、お互いの気持ちには気が付いてはいた。
しかし、千春は4年前に山崎が事故にあい、その事を忘れる事が決して出来なかった。
というのも、その事故は山崎が千春を守ろうとして起きた為である。

****以下、回想****

日が沈んでかなりの時間が経っていた。
しかし、千春はやっとの事で帰路に付いたばかりだった。
学校で時間がかかる用事があり、その為に帰宅が遅くなってしまったのだ。
しかし、彼女が学校を出てから、3つの人影が彼女の後をつけている事に気が付く筈もなかった。

彼女は完全に疲労した様子で、通りを数ブロック歩いていた。

そして、突然、事は起こった。

暗闇から3人の男が飛び出し、彼女を捕まえた。
3人の内、2人が彼女を捕らえている間に、もう1人が彼女の財布を盗もうとした。
すると、突然、その財布を盗もうとした男が別の少年にパンチを喰らった。
その少年は山崎だった。

「どっかに行け!」
山崎は叫んだ。
「彼女に指一本触れるな!」

別の1人の男が彼を捕らえようとしたが、あっけなくノックアウトされた。
すると、別の男が持っていた拳銃を引き抜き、山崎に向けて引き金を引いた。

千春は悲鳴を上げた。
すると、3人の男は何処かに逃げ去ってしまった。

「誰か助けて!救急車を呼んで!」
必死の思いで彼女は叫んだ。

山崎はすぐさま、病院に搬送された。
彼の両親がすぐに病院にやって来た。
それに続いて、さくらや千春の友人達も病院に駆けつけた。

「容態はどうなの?」
さくらが尋ねた。

「分からないわ。」
心配そうに千春は答える。

「心配ありませんわ。」
知世が言った。
「全て上手く行きますわよ。」

****回想終わり****

「全て上手く行ったのよね。」
千春は考えた。

「手術は成功したし、彼もすぐに回復したのよね。でも、あの時、私、誰かにつけられている事に気が付いていたら、あんな事、起こらなかったし....ああ、私がもっと注意していれば....」
「全て私のせいだわ。」千春は一人言を言った。

「何で君のせいなんだい?」
彼女の背後から、そう誰かが尋ねた。

彼女は振り向いた。そして、驚きにかられた。
そこにいたのは、紛れも無くあの山崎貴史だったのだ。

「千春ちゃん、何で君のせいなんだい?」
山崎は尋ねた。
「悲しそうだね?大丈夫?」

「心配ないわ。」彼女は即座に答えた。
「何でも無いのよ。ねえ、ジュースでも飲まない?」

「そうだね。この辺、カフェあるのかな?」
山崎が尋ねた。

「勿論!」
千春が答える。

2人はカフェテリアまで歩き、店に入ると、窓際の席に座った。
2〜3分後、褐色の髪の毛とチョコレート色の目をした少年がやってきた。

「李君!」
千春が叫んだ。
「ここで何してるの?」

「俺、ここで働いてるんだ。」
小狼は言った。
「で、ご注文は?」

「オレンジジュースを2つ。」
千春が言った。

「木之本さんとの関係はどうなの?」
山崎が尋ねた。

「ありがとう、とっても上手く行ってるよ。」
小狼は一寸赤面して答えた。
「俺、さくらに、結婚しよう、って言おうと思ってるんだ。」

「凄いじゃない!」
千春が叫んだ。
「さくらちゃん、幸せにしてあげてね!」

小狼は頷くと、注文の準備の為、その場を去った。
2人はジュースを飲むと、少しばかり雑談し、帰宅する事にした。
カフェを出ると、お互いに別れを告げた。
山崎は通りの方に歩いて行き、千春は反対の方向に歩きだした。

その時、千春は山崎へのプレゼントの事を思い出した。
彼女はまだ、何を買おうか決めていなかった。
そこで彼女は自分でプレゼントを作ろうとした。
彼女は幼い時、好きな人にテディベアを贈ると言う事を友人の佐々木理佳に聞いた事を思い出していた。

「そうだわ!」
彼女は叫んだ。
「山崎君の為にテディベアを作ろう!」

次の日....

時刻は4時になっていた。
千春は朝食と昼食以外、部屋から出る事は無かった。
それ以外の時間は部屋に鍵をかけ、一歩も外に出てこなかった。
彼女の母親は彼女に何かあったのかと心配していた。
千春の母は千春の部屋の前に立ち、ドアをノックした。

「どうぞ。」
千春は作りかけのテディベアをベッドの下に隠しながら言った。

「ごめんなさい。話、出来る?」彼女の母は尋ねた。

「うん、お母さん。」

「何か心配事でもあるの?食事以外、部屋から出てこないなんて....私、貴方が心配だわ。」

「何でも無いのよ、お母さん。」
千春は笑って答えた。
「私の事は心配しないで、大丈夫だから。」

「でも、貴方、私に何か言う事があるんじゃないの?もし、困ってるんだったら、一人で悩む事は無いのよ。」

「ありがとう!お母さん。」千春は言った。

千春の母は振り返って、部屋から出て行こうとしていた。

「待って、お母さん。実は、部屋から出なかったのには訳があるの。」
千春は母に向かって言った。
「でも、心配しなくってもいいのよ。」

それを聞いて母は部屋の方に引き返した。

「話してくれる?」
母はベッドに座りながら言った。

千春は裁縫箱と作りかけのテディベアを取り出し、母に見せた。
「今日、部屋から出なかったのは、これを仕上げたいと思ったからなの。」

母はテディベアを見つめ、そして尋ねた。

「誰の為に?」

「山崎君の為に....。」
千春は少々赤面して答えた。
彼女にとって、山崎の事を母に話すのは一寸不思議な気分であった。

「山崎貴史君?幼稚園からずっと一緒だった男の子?」

「うん。」

「で、貴方、彼の事、好きなのかしら?」
母は尋ねた。
千春は少々赤面して頷いた。

「貴方達2人には幸せになって欲しいわ。」
母は笑って言った。千春も又、笑いを浮かべた。
「彼がいい子だって事は分かってる。何時か夕食をご一緒したいわ。」

千春は、母のその言葉に頷いた。
母は愛情一杯のプレゼントを仕上げるのを許し、部屋を出て行った。

遂に山崎の誕生日がやって来た。
千春は彼を招待していた。

2人は2時に東京タワーで出会った。
頂上からの眺めは美しいものであった。
だが、そんな事より千春は山崎の方に注意を払っていた。

「彼って、とってもハンサムなんだなぁ。」
彼女は考えた。

「千春ちゃん、ココア飲みに行かない?」
山崎が尋ねた。

「いいわね!」千春は即座に答えた。

2人はゆっくりと歩き、3日前に行った同じカフェに向かった。
再び、小狼が注文を取りに来た。
2人はそれぞれココアを注文し、2時間程雑談をした。
カフェを出ると、すっかり外は日が落ち、夜のとまりが降りていた。
千春と山崎は公園まで歩き、大きな桜の木の下に腰を下ろした。

「今だわ。」
彼女は持っていた包みを取り出しながら、考えた。

山崎は彼女の手の包みを見て、尋ねた。
「何だい?」

千春はプレゼントを山崎に手渡した。
そして、彼は注意深く、その包みを開けたのだった。
中にはテディベアと手紙が入っていた。
手紙を取り出すと彼はその手紙を読んだのだった。

同封されていた手紙の内容は以下のようなものだった。

「親愛なる山崎君へ。

何で私、ずっと一緒にいる、って事を言う事が出来たのかしら?
貴方って、不思議な人ね。
そんな事はもう分かってるわよね。
じゃあ、貴方は私の親友なの?
そんな事も分かっているわよね。
ともかく、貴方の誕生日、おめでとうって言いたいの。
そして、今まで私の心の奥に有った事を言うわ。
心の底から愛してる山崎君。

愛を込めて、三原千春」

山崎は長い時間、手紙を読みつづけていた。
ゆっくりと千春の顔を見上げたが、その顔は一寸赤面していた。

「ねえ、古代エジプトでテディベアが誕生日のプレゼントとして一般的だったって事、知ってた?」

千春は山崎を不信の眼差しで見つめた。
彼って、どうして私が嫌がるような事出来るんだろ、と言う感じで。

千春は泣き出してしまった。

「どうして、そんな嫌な事するの!?」
千春は叫んだ。
「どうして、そんな事を出来るのよ?貴方なんか嫌い!」

「話は最後まで聞いてよ。」
山崎は落ち着いて言った。
「そんな事は別として、テディベアって、こう言う場所で愛してる人から貰うもんだったんだ。それで、もし、愛する女性から男性が手作りのテディベアを貰ったら、それは、その男性がその女性の事を愛してて、男性の残りの人生を、その女性に捧げる、って事を意味していたそうだよ。」

千春は驚きの眼差しで山崎を見つめた。

「僕も愛してる、千春ちゃん。」
山崎は笑って言った。
千春は彼に抱きついた。
暫くの間、彼ら2人は動く事が無かった。
その間に山崎はポケットから何かを取り出した。

「ずっと長い間、こうしようとしてたんだ。僕と結婚してくれるよね?」
山崎は尋ねた。

千春は何と答えて良いのか、分からなかった。
と言うのも、目に涙が溢れていたからだ。
彼女は優しく彼にキスしたのだった。

キスを止めると、山崎は彼女の指に指輪をはめた。
千春は笑って、その指輪をジッと見つめた。

その指輪は、実に美しい物であった。

それから、彼らは沢山の約束事を決めた後、家に帰る事にした。
手に手を取り、2人は通りの方に歩いて行った。

「山崎君、愛してる。」
帰路の間、千春は山崎にそう囁いたのであった。

(終わり)

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(作者後書き)

私はこの作品を楽しんで書きました。
読者である貴方がこの作品を読んで、楽しんでくれる事を願ってやみません。

実は、この作品は「CCさくら」に関する最初の作品です。

私はベストな作品に仕上げたつもりです。
(でも、気楽にやってましたけど)

どうか、感想・意見等がありましたら、E-Mailで私まで送って下さい。
私にとっても幸わせな事ですから!

では、読者の皆さんに、今もこれからも、平和と愛、そして希望が訪れる事を祈ってやみません。

Felipe S. Kai

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January 5 2003 by Felipe S. Kai
Translated by alpha7 at November 9,2003

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