雪が降る。
(Original Title:Snowfall)

出典:Dreiser's Page
著者:Dreiser
(http://www.angelfire.com/anime2/superhighway/Dreiser/dreiser.html)

訳者:alpha7

「雪が降ってきたわ!」

アスカが冷たく赤い目の連れ添いの方に振り向くと、レイが呟いた。
「そう、冬になったみたいね。」

「面白いじゃない。あんた。」
アスカはひょうきんな口調で言った。
2〜3秒してから、笑いを浮かべ、優しく雪を拾い上げ、言った。
「でもね、私、あんたが雪が降ってるのが楽しく無い、って言うと
思っていたんだけどね。」

「楽しい?」
レイは自分の目を曇らせ、距離を置いてアスカを見つめた。
「私、そんな事、考えて無いわ。」

「何を考えていたのよ?」
アスカはレイの方向に振りかえりながら尋ねた。
「好きか、そうじゃないか、どっちかでしょ。」

「どうして好きなの?」
レイがすかさず尋ねる。

「どうして、ですって?」
アスカはその質問に目を細め、考えを巡らせると、目を瞬きさせた。
「そうね。私、ドイツでの幼い時を思い出すのよ。以前、ママが言
ったのよ....病床でね。こう言う事は雪の天使がやってるんだって
事をね。」

「雪の天使?」
レイが聞き返す。

「あんた、私に雪の天使が何か知らないって言わないでね!」
アスカは大口を開け、疑う様にレイに叫んだ。

「私、それが何か知るべきなの?」
レイが尋ねる。

「あんた、知るべきね?!勿論、あんた、知っとくべきよ。」
アスカは手を振ってレイに向かって怒鳴った。
「何で、あんた、そんな事も知らないのよ?」

「エヴァパイロットだから?」
レイが答える。

溜息をつき、アスカはレイの背中を押して言った。
「いいわ。そうよね。私、自分が成すべき事と、あんたが好むと好
まざるとに関わらず、私の役に立つ事、分かってるんだから。」

「あなたの....役に立つ?」
レイは目を大きく見開いて尋ねた。

アスカはレイの手を握り、それを引っ張りながら言った。
「そうよ!あんた、雪の天使になって、私の役に立つのよ!」

「雪の天使に?」
レイが聞き返す。
「でも、どうして?」

「この為よ。」
アスカはレイを近くの公園にある雪に覆われた丘の前に連れてくる
と、そう言った。

「何?私、分からないわ。」
レイは答えた。
始めのうち、アスカはその言葉に困惑していた。

「あんたが、どうしてか、って事を私に聞くべきじゃない、って事
の為よ。」
アスカは少々、いらついた口調で言った。
「どれだけ面白い事か....あんた、そう言う事、誰かとした事無い
の?」

長い沈黙の後、レイは言った。
「誰も、私と何か面白い事をしよう、なんて人は居ないわ。」

アスカは頭を上げ、レイの青く悲しい目を見つめ、そして、囁いた。
「レイ、ごめんなさい。」

「何の為に?」
レイが尋ねた。

「何の為、ですって?」
アスカは目を大きく見開いて答えた。
「その意味さえ、分からないの?あんた。」

遠い方向に視線を向けながら、レイは言った。
「意味は無いわ。単にそうしただけ。その意味の全ては、貴方が
最初に私に質問した事と、私に特別な事をさせようとしている事な
のね。」
言葉を止めてアスカを見ると、レイは更に言った。
「もし、貴方がまだそうして欲しいのなら、私、貴方の雪の天使に
なる事、請け負ってみたいわ。アスカ。」

レイの視点は雪でぼやけていた。
アスカは涙がこぼれている目を素早くこすり、そして、言った。
「勿論、私、そうして欲しいわ。」

「いいわ。」
レイは笑いながら言った。
「何から始めるの?」

アスカは上下に頭を振り、レイに雪の天使になる為の難しい役割に
ついて説明し始めた。

だが、その仕事について、レイは価値がある事だ、と感じ取ってい
たのであった。そして、2人がその役割の幾つかを実践していると、
1時間もの時間が過ぎ去り、アスカはずっとこうしていたい、と幸福
感を感じ取っていた。

アスカは雪の上に横になり、空を見上げ、悲しそうに言った。
「雪が止んだわ。」

アスカはレイの方向に振りかえると、レイの赤い目が驚きに満ちて
いる、と言う事を感じていた。
レイは、どうやらアスカは何も言わずに何かをしでかすかも知れな
い、と言う事に注意していた。

レイは、こんな事をしているアスカを見た事が無かったので、自分
の目を輝かせて何も言わなかった。
レイが驚いた事とは、アスカが雪のボールをレイに投げ付けた事と、
その雪が自分の肌で温まって解けて行った事であった。

アスカが雪の塊を飲み込んで言った。
「これ、面白かったわ。」

長い沈黙。

「そうね。」
レイがすかさず答えた。

「あんた。」
アスカはレイの頬にゆっくりと手を伸ばし、優しく言った。
「私と一緒に家に来て。その代わり、私と一緒に居て、もうこれ
以上、一人っきりにしないで。」

「家に。」
レイは答えた。
彼女は暫くアスカの言葉の意味を考えた。
「ええ、私、貴方と一緒に行くわ。」

「いいわ。」
アスカは溜息まじりに言った。
「嬉しいわ。」

2人は雪の上に横になっていたが、起き上がり、ゆっくりと家の方向
に向かって歩き始めた。

自分の鼻の上に雪が落ちてくると、アスカは突然、立ち止まり、満面
の笑みを浮かべた。
彼女は空を見上げ、明るく叫んだ。
「又、雪が降って来たわ!」

アスカは空と、雪が降ってくる様を見つめつつ、グルグルと体を回し、
幸せそうに言った。
「見てよ、レイ!こんなに美しいの見たこと無いでしょ?綺麗よね?
雪が降る事より綺麗なモノは無いわ。」

レイはアスカの方に頭を振り、アスカを見つめて囁いた。
「それは、貴方だわ。」

−終わり−

【作者後書き】
レイ&アスカは「新世紀エヴァンゲリオン」のキャラクターです。
この作品は最初にクリスマスを題材にしたもので、良い作品になって
いると思います。
再度、申し上げておきます。
私はレイとアスカのロマンチックなペアが好きです。
そう、私は風変わりな人間なんです。
この作品は2人の少女のCGをベースにしました。