「魎呼の願い」
(Original Title:Ryoko's Wish)


出典:The Tenchi Muyo Fan Fiction Archive
(http://www.tmffa.com)

作者:Clayton Overstreet
訳者:alpha7 & Takano

柾木家とって、何時も通りの一日であった。
天地は早朝から人参畑で仕事をする為に出かけていた。
魎呼と阿重霞は朝食の事で(何時もの通りの)大喧嘩を始めていた
し、天地は彼らを放っておきたかったからである。
砂沙美は何時も通り慌ただしく朝食を作っていたし、天地の祖父は
自分の神社へ、父は仕事に出かけて行ったのだった。
美星は彼らの仲間に新たに加わった清音と腕を組んでいた。

鷲羽は食事を終えると、すぐさま自分の研究室に戻って行き、魎皇
鬼は砂沙美と一緒になって遊び始めた。

天地は人参を収穫しながら、自分の家の客人達に付いてもう一度考
えてみたのだった。
鷲羽ちゃんと砂沙美ちゃんは、自分の事を愛する対象と言うより、
家族の一員である、と考えているのは天地も承知していた。
美星さんと清音さんは、清音さんが美星さんのパートナーとして再
び、やって来て以来、お互いに一緒に居る。
加えて、砂沙美ちゃんと人型に変身した魎皇鬼も同じだ。
いや、彼は魎呼と阿重霞の何れかしか選べないのか。
そして、彼はすでに決心していたのであった。
彼は魎呼に自分が彼女の事をどう感じているか言っていなかった。
そうなれば、阿重霞は独りぼっちになってしまう。
まあいい、彼には考える時間は十分にあったのだから。

魎呼は鷲羽の研究室に座っていた。
魎皇鬼は3つの輝く不思議な3つの金色のボールを見つけていたの
だった。
「何だい、これ?鷲羽。」魎呼が尋ねた。
鷲羽はこのボールを数日にわたって分析しており、ボールの働きを
突き止めていた。
「ドラゴンボール、って呼ばれてるわ。私、同じのをナメック星で
見つけたのよ。7つをボールを集めたら、ドラゴンが1つか3つの
希望を叶えてくれるのよ。3つの希望を比較判断してね、私、1つ
の希望を言おうと思ってるの。」
魎呼は驚きで目を輝かせた。突然、クスクス笑うと、笑い声は大き
くなった。
「私には完璧な希望があるぜ。」
魎呼はそう言うと、ボールを握りしめ、研究室を飛び出した。
家の外に出ると、魎皇鬼を握りしめ、空に投げた。
ネコ鳴きウサギは宇宙船に変形し、魎呼を乗せて離陸した。
「魎皇鬼、このボールをスキャンして、別のやつを見つけるんだ!」
魎皇鬼はさらに離陸し、光となって消えて行ったのだった。

鷲羽は研究室から出ていった魎呼をゆっくり追って来た。
そこでは、皆が大騒ぎしていたのだった。
阿重霞は鷲羽を見つめ、そして、尋ねた。
「魎呼さん、何処に行ったんですか?鷲羽様。」
鷲羽は阿重霞を見つめ、ドラゴンボールに付いて話した。
「それで、魎呼さん、それを持って行ったのですか!魎呼さんが、
自分を天地様が愛する様に希望してるのはご存じでしょうに!」
阿重霞は叫んだ。

鷲羽は阿重霞に笑いかけた。
「多分、そうなるわね....本当にあの子、最初からそう考えてたし
ね。でも、阿重霞殿、あの子が天地殿をそうしたいと本当に考えて
いるの?」
阿重霞は鷲羽に『そうよ』と今にも叫ぼうとしていたが、思いとど
まった。
彼女は魎呼が、宇宙海賊であると言う事を嫌っていたにもかかわら
ず、そうしたいしていたと知っていたし、魎呼が天地を深く愛して
いるのも知っていたからだ。
「いいえ、多分そうはなりませんわ。でも、鷲羽様は世界を何とで
も出来る力を魎呼さんに与えたんですわよ。」
鷲羽は笑い、そして、頷いた。
「ハア、それも、面白いんじゃない?」

天地は日没間近に家に戻ってきた。
そこに居た皆は彼に、魎呼が出かけた事を話した。
そうして、彼らは自分達の希望について議論をしていたのだった。
そんな議論が1時間程続いたが、魎皇鬼が家の外に着陸すると、皆
は戸口から外に出て、ボールを手に持った魎呼を見つめていた。
魎呼は湖の近くに腰を下ろし、ジッと空を眺めていた。
皆は暫くの間、魎呼を眺めていたが、突然、天地が彼女の前に歩き
始めた。
阿重霞は彼を止めようと、手を差しのべたが、何かが彼女を止めた
のだった。
突然、魎呼はボールを見つめると、叫んだ。
「いでよ、神龍。そして、願いを叶えたまえ!」
ボールは光り輝くと空が真っ暗になった。荒波が湖にたち、突然、
雷が鳴り響いた。
そして、天地はその場に立ち止まり、空から現れた巨大なドラゴン
をジッと見つめていたのだった。
ドラゴンは魎呼を見つめて言った。
「お前が私を召喚した。お前の望みを叶えてやろう。」
魎呼は天地の居る方向に振り向き、ゆっくり頷いた。
そして、ドラゴンの方向を振り向いて彼女は言った。
「私は普通の人間になるのが望みだ。そうなれば、天地も私の事は
恐れなくなるから。」
ドラゴンの目が光り輝くと、魎呼は突然、不思議な感覚に襲われた。
天地は彼女の希望を聞き、彼女を見つめていた。
そして、最後には、ドラゴンから目を完全に離していたのだった。
天地が魎呼を見つめていると、彼の目の前で彼女に変化が現れた。
彼女の髪の毛はトゲトゲしさが消え、肩の位まで縮んでいった。
又、目の色も黄色からネコの様な青に変わっていったのだった。
次に、彼女の尻尾と牙も消えていったのであった。
魎呼は天地の前に笑って歩き始めた。
「見ろよ、天地。今、私はお前と同じ様になったんだ。これで、私
を恐れる事は無いぞ....」
突然、魎呼は立ち止まり、その場に倒れた。
彼女の顔はシワシワになり、年をとった様に見えた。
天地が彼女の元に行き、皆もそれに続いた。
天地はドラゴンを見上げて尋ねた。
「魎呼に何をしたんだ?」
ドラゴンは天地を見つめて答えた。
「彼女は普通の人間になりたい、と願った。彼女は2000歳を超
えている。普通の人間なら、その年では死んでいる。」
天地はポッカリと口を開け、倒れ込んだ魎呼を見つめた。
彼女は最初に岩屋の中で出会ったミイラの様になっていた。
彼女は起きあがり、自分の手を彼の顔に伸ばした。
「私は自分の願いを叶えたんだ。天地。」
突然、彼女の手はガックリと下に落ち、目を閉じた。
皆の頬に涙が流れ始めた。
天地は、ひからびた魎呼の手を握り、見つめて言った。
「ごめんよ。魎呼。俺、お前を決して恐れるべきじゃ無かったのか
も。今じゃ、もう言うのは遅いかも知れないけど....愛してるよ。
魎呼。」
天地は魎呼を抱き寄せ、彼女の唇にキスをした。
彼の頬に涙が流れていた。
阿重霞はその場に座り込んだ。
彼女は天地を失ったと言う事を悟ったのだった。
だが、阿重霞には嫉妬する場所も時間も無かった。
彼女は湖をジッと見つめ、ドラゴンを見つめた。
「貴方、まだ、ここで何かなさるおつもり?これ以上の厄介事を起
こすおつもり?」
ドラゴンは輝き、彼らを見つめた。
「私は2つ目の願いを叶える迄、去る事は出来ない。」
鷲羽は息を切らした。
「私の計算外になった様ね。」
突然、美星が言った。
「待ってぇ。私達の別の願いですかぁ?それならぁ、どうして、
魎呼さんを元に戻せないんですかぁ?」
皆はボッとした美星を見つめた。
「美星、あんた、冴えてるわ!」
清音は叫び、自分の金髪のパートナーにキスした。
天地はドラゴンを見つめて尋ねた。
「出来るのか?」
ドラゴンは頷いた。
「分かった。だが、これ1度きりだぞ。」
天地は立ち上がり、そして、言った。
「それなら、俺達の願いは魎呼が願いを言う以前に戻してもらう事
だ!」
ドラゴンの目は赤く輝いた。
「お前達の願いを聞き入れよう。」
ボールは輝き、そして、魎呼の体に変化が現れた。
魎呼の目が、まるでネコの様に再びパッチリと開かれた。
「天....天地?何が起きた....」
彼女は天地にキスして、離れた。そして、突然、皆が彼女を抱きし
めたのだった。
無論、阿重霞さえも。
天地にキスして離れた魎呼の目には涙が溢れており、そして、笑っ
て言った。
「オゥ、天地。何だい?これは。」
皆が魎呼を見つめ、天地が尋ねた。
「お前、覚えてないのか?」
彼女は頭を上下に振った。
「いいや。私は、自分の願いを叶えようとした。そしたら....天地
が私にキスしてた。」
皆は笑い、何が起きたか、彼女に話した。
「ごめんよ。前から俺、魎呼の事をどう感じてたか、言うべきだった
んだよ。お前にも、阿重霞さんにも。」
天地は言った。魎呼と阿重霞は思いやりを持って彼を見つめた。
突然、魎呼はドラゴンを見上げた。
「ありがとよ。」
ドラゴンは頷き、そして、消えていった。
ドラゴンボールも空高く舞い昇り、消えていったのだった。
天地は魎呼の方に振り返り、彼女に再びキスをした。

すると、突然、彼らの後ろから聞き慣れない声がした。
「力の源はここでは無かったな。だが、お前達、2つの願いを無駄
にした事は馬鹿げているな。」
皆は声の方向に振り返り、彼らの後ろに立っている男を見つめた。
彼は、鷲羽や魎呼と全く同じ様に黒のトゲトゲしい髪をしており、
青い戦闘服に白い戦闘ジャケットを身につけていた。
阿重霞は彼が誰か、即座に分かった。
そして、同時に、彼も彼女を確認したのだった。
阿重霞は頭を下げた。
「ベジータ王子」
ベジータも頭を下げ返した。
「阿重霞皇女」
皆は阿重霞を見つめた。
「誰だい?」
天地は尋ねた。
清音がギャラクシーポリスのIDマシンを取り出して言った。
「彼はベジータ王子、最後のサイヤ人だわ。彼は数百の惑星を破壊
したフリーザ軍の一級戦士ね。フリーザ軍は気に入った星は有無を
言わせず支配するそうだわ。」
ベジータは頷いた。
「俺はもうフリーザの配下ではない。この惑星に住んでいて、最後
のサイヤ人でもない。カカロットという名の、地球では孫悟空と呼
ばれている奴も、同じサイヤ人だ。俺たちには子供もいる。」
天地が尋ねた。
「何が望みだ?ベジータ」
ベジータは彼を見つめ、あざ笑った。
「何だ、お前?」
天地は彼を見つめた。
「ここは俺の家だ。それに、お前は俺達を侮辱したじゃないか。お
前から説明しろよ。」
笑い声を上げたベジータが、その場にいる全員を見つめた。
「貴様、誰に向かって物を言っている。俺は宇宙最強だ。誰の指図
も受けん。こちらにお見えになる、 阿重霞姫と砂沙美姫を除いて
はな。」
天地は立ち上がり、自分の戦闘服を召喚した。
「俺は柾木天地。樹雷皇家の継承者だ。こっちは俺のじっちゃんの
遥照。」
天地は遥照の後ろへ、手で合図を送った。
「俺の親父の信幸、マッド....いや、奇人で科学者の鷲羽ちゃん、
宇宙海賊の魎呼。」
天地が皆を紹介していると、ベジータは突然、口をポッカリと開い
たのだった。
「....宇宙海賊の魎皇鬼、ギャラクシーポリスの刑事、美星さんと
清音さん。」
美星の「悪名」を知っていたせいか、ベジータの顔から血の気が全
て失せた。
「お....お前、美星と言ったな!」
だが、彼がそう言う前に皆はベジータの後に空から地上に降りてき
た者達に注目が移っていた。
「誰だい?皆。」
天地はその者達を見つめて尋ねた。
幼い少年が20歩程前に歩み出て行った。
「こんにちは、僕は孫悟飯です。ベジータさんが何かご迷惑をおか
けして、すみません。」」
彼は笑い、ベジータを見つめた。ベジータは最終的には落ち着きを
取り戻したが、美星を神経質にチラッと眺めていたのだった。
天地は笑いを浮かべた。
「おい、俺、君に見覚えがあるぜ。去年のセル戦で闘った子じゃな
いのかい?」
悟飯は赤面し、頷いた。
そして、彼は自分の回りにいる人々を指差した。
「こっちは僕の友達で、ヤムチャさん、天津飯さん、ブルマさんに
未来から来た、ベジータさんとブルマさんの子供のトランクスさん
....」
悟飯がトランクスの名前を挙げたとき、ベジータと同じ服装を着て
ブルマの手を取っている若者が、軽く会釈した。
「....こっちはクリリンさんとピッコロさん。」
悟飯は頭に触覚の付いた緑色の男を指差した。
皆はお互いを認識出来なかったので、天地は笑いを浮かべ、再び、
自分達の自己紹介を行った。
天地が自己紹介すると、皆の雰囲気が和み、お互いに頭を下げて挨
拶したのだった。
ベジータは鼻息を荒くして言った。
「お前は決して、あんな風に頭を下げるなよ。」
皆は笑った。そして、ブルマがベジータに歩み寄り、彼の頬にキス
をした。
「ベジータったら。」
ベジータは自分が浮かべた微かな笑いを隠そうと必死だった。

天地は悟飯の方向に振り返って言った。
「それで、皆、ここでどうしょうようと?」
悟飯は彼を見つめた。
「僕達は新ナメック星に行くためにドラゴンボールを使おうと思っ
ていました。僕のお父さんを生き返らせたいんです」
天地は寂しそうに悟飯を見つめた。
「ごめんよ。でも、俺達がちょうど望みを言っちまったからなぁ。」
悟飯はうなだれ、涙が頬に流れた。
すると、鷲羽が前に進み出て言った。
「問題無いわよ。私達、宇宙船を何隻か持ってるしね。それに、貴
方達を、必要な所へ何処へでも連れてくのをお手伝いしましょ。」
悟飯は幸せそうに目を上げた。
「本当ですか?」
すると、砂沙美が立ち上がった。
「私、丁度、夕ごはんの準備をしたの。一緒にどう?」
悟飯は目を上げた。
「良いんですか? 僕達沢山食べますよ」
砂沙美は笑いを浮かべた。
「魎呼お姉ちゃんの方が貴方達の誰よりも食べるって、賭けても良
いわよ。」
魎呼は天地の腕に自分の腕を回し、顔を赤らめた。
悟飯は笑って頷いた。
そして、皆は家の中に入った。

食事では、旅の事について話し始めた。
「それで、君がセルを倒したのかい?俺が聞いた所では、ミスター
・サタンって奴がやったって。」
悟飯は笑った。
「そう、サタンさんも活躍しました。でも彼の力では傷一つ付けら
れなかったと思います。」
砂沙美はピッコロを見つめた。
「貴方、何も食べないの?」
ピッコロは彼女を見つめ、笑った。
「俺は、水さえ飲んでいれば良いんだ。光合成が使えるからな。」
砂沙美は笑いを浮かべた。
「なら、少しで良いから、私の作ったチョコレートケーキを食べて
見て。」
砂沙美はケーキのスライスを彼に差出し、笑った。
ピッコロは砂沙美からスライスを受取り、そして、目を大きく見開
いた。
「ほぉ、美味いものだな?」
皆はピッコロがケーキを飲み込む様を見て、頷き、そして笑った。

「それで、君達、どうしてナメックに行く必要があったんだい?ここ
に有ったのは使えないし....もしかして、俺達が持って無いのかい?」
悟飯は笑った。
「いいえ、地球のドラゴンボールは一度生き返ると、二度と同じ人間
を生き返らせることは出来ないんです。しかし、ナメック星のドラ
ゴンボールは、自然死でない限り、何度でも生き返らせることが出来
ます。父は一度生き返 っていますから、ナメック星の物が必要なん
です。それに、セルに 破壊された友達の人造人間の16号も生き返
らせたいですし。」
天地は頷いた。
「俺達が力になれなかったのを謝るよ。でも、2〜3か月前までは
俺は普通の地球人と考えていたんだぜ。」
天地は悟飯達に、どうして魎呼達と出会ったかを話した。彼が自分
の学校での出来事を話すと、魎呼が彼に笑いかけたり、キスしたり
したのであった。
悟飯と仲間達は、天地と神我人との闘いの話を熱心に聞いていた。
ベジータは呆然として天地を見つめた。
「お前が....お前が神我人を倒したのか....それに、光鷹翼を使う
事も出来るのか!」
ベジータは窓の方に行き、壁を拳で叩いた。
ブルマは壁に巨大な穴が開いたの見て、ベジータに大声で叫んだ。
「ベジータ! 何をするの!」
天地はブルマを落ち着かせて、言った。
「大丈夫だ。いろんな事が起きるなぁ。でも、どうして、そんなに
気が動転してるんだい?」
ブルマは笑った。そして、ブルマの居る反対側の方からトランクス
が天地の前にやって来た。
「父は常に宇宙最強の戦士でありたいのです。でも今、貴方が、自
分よりも強い戦士であるかもしれないと思い、動揺したのだと思い
ます。」
砂沙美はベジータに歩み寄り、彼の背中に手を置いた。
ベジータは彼女を見つめ、そして、突然、彼女の頭上に津名魅が現
れて、言った。
「ベジータ、貴方は決して最強の戦士にはなれないわ。」
ベジータは津名魅を見つめ、突然、笑いを浮かべた。
「貴方は、俺がたとえ如何に厳しい訓練を積んだとしても、ドラゴ
ンボールに願いを叶えて貰ったとしても、常に、誰かが俺より強く
なると言うのか?」
津名魅は笑い、頷いた。
「そう、私自身は女神なの。そして、女神は最強の戦士になる事と
同じ位に大変な事なの。」
突然、ベジータの頬に涙が流れ落ちた。そして、彼は笑い始めて、
言った。
「そう言うことか! それを言ってくれた事に感謝するぜ!」
回りの人間は呆然とベジータを見つめた。
トランクスが津名魅の方に振り返り、そして、尋ねた。
「どうして父はこんな事で幸せそうなんです? 最強になることが
望みだったのに....。」
津名魅は心得顔で笑いを浮かべ、頭を左右に振った。
「ベジータは常に厳しい訓練を課せば、自分が最強の戦士になる事
が出来ると考えていたの。でも、それは彼の本心だったのかしら。
サイヤ人の王子として生まれ、誇りを受け継ぎ、周りの人が最強で
あるように、追い込んでいったのではなくて? 今、彼は、真に最
強であることの意味を理解したのよ。」
皆は笑った。
「そうね、もう貴方は自分自身の拘りから、解き放たれても良いん
だわ。」
ブルマが言った。
津名魅は頷き、彼女の役目は続いた。

翌日、皆は湖の辺に集合していた。
ブルマが鷲羽の方に振りかえって、言った。
「何処に宇宙船があるのよ。」
鷲羽はニッコリと笑い、彼女を見つめた。
「それって、宇宙で最も偉大な科学者を疑ってる言葉じゃない?」
彼女は魎呼と清音の方に振り向いた。
「私達、魎皇鬼か雪之丞を出すべきかしらね?」
魎呼と清音はお互いに笑いを浮かべた。
「私、魎皇鬼があの子達の印象に残ってると思うだけどね?」
魎呼は尋ねた。清音はそれに答えて頷いた。
悟飯は困惑していた。
「僕も、魎皇鬼さんが良いです。」
悟飯は猫鳴きウサギを拾い上げた。
「ヘイ!」
彼は、魎呼が手で魎皇鬼を掴み、宙へ投げ飛ばすのを見て、叫んだ
のだった。
突然、魎皇鬼は大きな叫び声を上げ、巨大な宇宙船に姿を変えた。
Zの戦士達は、魎皇鬼が変化して行く様を畏敬の念を持ってジッと
見つめていた。
ブルマは鷲羽を見つめて、言った。
「これ、貴方が作ったの?貴方、宇宙で最も偉大な科学者だわ!」
鷲羽は笑い、自分自身の頬をつねった。
「最も可愛い、ってのも忘れないでね!」
皆は笑った。
魎皇鬼のメインスクリーンが映し出され、地球がそこに映し出され
た。
「オッテー、新しいナメックの位置を教えてくれ。」
魎呼は言った。
ブルマは紙片を皆に手渡した。そして、データを魎皇鬼に転送した
のだった。彼らは過ぎ去る星々を見つめていた。
悟飯、クリリン、そして、ブルマは昔のナメックを旅した事に付い
て皆に話した。ベジータも又、興味ある宇宙の話をした。その殆ど
は彼がフリーザに命令されて数々の惑星を破壊したと言う話ではあ
ったが。
ブルマは彼に笑いかけたり、彼の頬にキスしたりした。
最初の内、恥ずかしがったり、拒否したりもしなかった。
天地と魎呼はお互いに見つめ合いって、笑った。
クリリンも又、彼らを見つめ、笑った。
「俺の希望は妻が子供と安心して暮らせることなんだ。」
天地はクリリンを見つめた。背が低い彼を、子供だと思っていたのだ。
「あ、言ってなかったっけ。俺、去年18号と結婚したんだ。」
皆は彼の背中を軽く叩いたのであった。

2日程で彼らは新ナメック星に到着した。彼らがナメックに降りる
と、ナメックの人々が彼らに会いに彼らの元にやって来た。降り立
った彼らはピッコロのように、地球人とは違う2〜3の変化が体に
現れていた。
ナメックの人々は巨大な7つのドラゴンボールを運んで来た。
ナメックの長が呪文を唱えると、以前、湖で起こった事と同じ事が起
きたのだった。ナメックの長が悟飯の方に振りかえると、もう一度、
ドラゴンが召還されたのであった。
「お前の最初の願いは何だ?」
悟飯は笑い、そして、言った。
「僕のお父さんを生き返らせてください。」
ナメックの長は悟飯を見下ろしているドラゴンに願いを伝えた。
「分かった。お前の願いを聞き入れよう。だが、彼にとっては死ん
でいる方が良い事かも知れないぞ。」ドラゴンの目が光ると、突然、
悟飯に似た男性が現れた。
「お父さん!」
悟飯は叫び、彼に抱きついた。
ドラゴンは彼を見下ろしていた。
「さあ、おらの人生、取り戻さないとな。」
ブルマはナメックの長を見つめた。
「次の願いはアンドロイド16号を生き返らせる事よ。」
ナメックの長が願いを受け入れると、赤いモホークの巨大な男が姿
を現したのであった。彼は皆を見つめたが、皆は不思議な事に黙っ
てしまったのだった。
ナメックの長は彼らを見つめた。
「お前達の最後の願いは何だ?」
悟空は彼を見つめて、言った。
「おら、考えていたんだけどさ....チチが怒っていない時におら達
を戻せないのかい?」
ドラゴンは頭を左右に振った。
「すまないが、私の能力を越えてしまう事あるんだ。」
皆はクスクスと笑い、悟空は頭をかきむしった。
「こう言う場合は、おら達皆帰る事を願いとして叶えてもらうべき
かな?」
悟空は天地の方を振り向いた。
「おめぇらがつれてきてくれたのか?」
皆は頷き、そうだ、と答えた。
ナメックの長はドラゴンに最後の願いを伝えると、ドラゴンは消えて
いったのであった。

悟空は皆に自己紹介した。
鷲羽はサイヤ人の能力を知る事が出来る事を大変喜んでいたし、彼
らをテストする為に自分の研究室に連れて帰れると確信していたか
らである。Zの戦士達は快く、それに同意したが、天地達が彼らに
弔意を言った事に不安を感じていたのであった。
鷲羽は悪意に満ちた笑いを浮かべた。

彼らが柾木家に戻ると、家の外に多くの人々が黒山になっているの
を見出したのであった。
素晴らしい金髪の女性が子供を抱えており、彼女は怒っている様に
見えた。
クリリンはその女性の元に走って行き、彼らはキスをしたのであっ
た。悟空と悟飯は最後に宇宙船から降り立った。
「悟空さ、悟飯ちゃん、こっちだべ」
彼ら2人はチチの元に向かった。
彼女は怒りの眼差しで彼らを見つめたが、涙が頬を流れ、彼らを抱
きしめた。
「元気だっだか、オラ、逢いたかっただよ。」
彼らは彼女を抱きかかえ、笑った。
魎皇鬼は幼児に姿を変えており、皆の前に立ち、歌を歌い始めた。
「ミャ、ミャ、ミャ、ミャ....」
魎皇鬼は皆が自分の事を誉めてくれた事に対して頭を下げた。

パーティも終わる頃、天地達とZの戦士達は良き友人になっていた。
「な、おめぇら、今度またすっげぇ強えぇ奴が現れたら、一緒に戦
ってみねぇか」
悟空が言った。
天地はその言葉に笑い、頷いた。

すると突然、家の中から鷲羽がZの戦士達を呼ぶ声が響いた。
「ごめんなさいィ。貴方達、私のテストと実験に付き合ってくれる
約束、忘れてるわよォ。」
彼らは彼女を見つめた。
「一寸待ってくれよ。何も....」
だが、Zの戦士達は自分達が鷲羽の研究室のテーブルに縛り付けら
れている事に気が付いた。
「え、ええっ....」

(終わり or 続く??)
Revision 1 at February 12th,2001
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