[OAV版第1話の始まりのシーンは長年に渡り、混乱の種となってきました。
どうして魎呼は天地を襲ったのか?この疑問が2年前から"Ryoko Forever
Mailing List"で話題に上っていた時、議論になりましたが、誰も、どう
やって魎呼自身の見込みから、事を起こしたか、と考える人は居なかった
し、それに、勿論の事ながら、どうして彼女がそんな事をしたのか、分か
る人は居ませんでした。
それで、筆者は、この2人の話しを書いてみました。
この話は可能性の有る幾つかの解釈の1つに過ぎませんが、筆者は話を作
る事に思案しました。
しかしながら、話のネタが正しいとは思われないかも知れません。
この話はオリジナルのE-Mailを再編集し、最新版にしたものです。

OAV版の魎呼は人間ではありません。彼女は年齢5000歳以上であり、実質
上、不老不死です。そして、殆どの怪我を自分で治す事が出来る。それゆえ、
彼女は口では言い表せない苦痛から生き延びる事が出来たのです。彼女には
幼少期が有りません。彼女は幼少期が無いと教え込まれた。それゆえ、普通
の人々が、どの様に御互いの関係を築くかを知らなかったし、理解出来ませ
んでした。
彼女は彼女自身を不完全な玩具として扱う犯罪者の黒幕に育てられました。
そして、黒幕が盗難を行う際に彼女はとても有益だったのです。

今から、貴方を魎呼が居る場所にお連れします。そして、彼女の視点で物事
を考えて下さい。さあ、時間を700年前に戻しましょう....]

神我人の司令で、君は樹雷星に恐るべき破壊をもたらした。
君の使命は失敗した....神我人は君を罰するであろう。
だが、君の一番の心配事は別だった。
君は樹雷皇宮から、ずっと追跡されている。
彼の船は君の船より強く、そして、速かった。
彼は君を地球に追い詰めた。
君は地球に墜落した。

君は闘った....そして、彼も又、優れた戦士であった。
彼は、君を自分の剣で君を突き刺した。
それは、君が経験した事の無い痛みであった。
その痛みは、突き刺された痛みより、樹雷のエネルギーによる苦しみが殆ど
であったが。
彼は、君の大切な宝玉を没収した....君の感情の欠落が無くなった。
それでも尚、君は意識を失っていたが、感情は自由になり、君は神我人の支配
から解放されたのだった。

今、彼、即ち遥照は君を冷たく、暗い岩屋に幽閉した。
その冷たさは、君にとって新しいモノだった。
即ち、君がすくんでしまう宇宙の冷たさではなく、内側から冷えて行く様な
冷たさであり、体温を下げて行く様な冷たさだった。
君はかろうして生きていくだけのエネルギーを与えられ、君自身の体温を保
つ事が出来たのだった。

700年が経過した。
君は退屈だった。とても退屈だった。
その退屈さは、言葉で形容できるものでは無かった。
その時、唯一の関心事と言えば、君の前に少年が現れた事で有った。
そして、彼は君を恐れる事が無かった。

君は彼が好きだった。
(新しい感覚だ。これは何なんだ?)

君は岩屋の外に出たかった。君は彼がトンボを追いかけているの見る事が
出来た。君は彼と一緒に遊びたかった。
(遊び?遊びって何だ?神我人は決して遊ぶ事を許してくれなかった。)
だが、君は外に出る事が出来なかった。
君に考えが閃いた....君は幽閉されている中でエネルギーを少しずつ貯める
事にした。
そして、そのエネルギーが十分な量になった時、君は自分の束縛を破ろうと
した。
それは苦痛....と言うより、苦しみだった。
何故なら、君の体はエネルギー不足になるし、体を持続出来なくなるからだ。
だが、君は、そうしよう、と決心した。
そして、君はその事を実行に移した。

少年の母親が死んだ。
(母親?何で母親がそんなに特別なんだ?君には母親は居なかった....
少なくとも、居た、と言う事は憶えてはいまい。)
彼は泣きながら、君の岩屋に入って来た。
君は新しい感情を経験した。「同情」だ。
(何処から、この気持ちは来たんだ?確かな事は、神我人からのものでは無
かった。)
君は、彼を慰めたかった。
彼に触れたかった。
彼を抱きしめたかった。
彼に、大丈夫だ、私はお前と一緒に居るぞ、と言いたかった。
だが、どれも君には出来なかった。
君は、彼の頭にアストラル体の手を置いた。
だが、彼はそれに気が付く事は無かった。

彼には君を見る事が出来なかった。

年が経ち、少年はハンサムな若者へと成長した。
君は岩屋から出るだけの十分なエネルギーを確保していた....
直ぐ、君は彼の友達になる事が出来た。
(友達?友達って何だ?君には友達は決して居なかった。魎皇鬼が居た....
それが友達なのか?君は知らなかったし、魎皇鬼に聞く事も出来なかった。
君が魎皇鬼と語り合う事が出来たのは、700年前だったからだ。)

その時、奇跡が起きた。
君がアストラル体で岩屋の入り口を漂っていると、君は若者とすれ違った。
一方、彼は自分の前に漂っている光の玉に気が付いていないと思われるが....
どうにかこうにか、彼は岩屋の中に入った。
君は岩屋の入り口のゲートが開くのを見た。
彼は、君の為にやって来たのだ!
君は、岩屋の最下部に有る自分の体に急いで戻った。
(再度言っておくが、彼は光る玉には気が付いていない。)
そして、君は彼に挨拶しようと準備した。

若者は岩屋の一番奥深くにやって来た。
もし、まだ、君に肺が有れば、期待で息を切らしていただろう。
彼は、君が幽閉されている場所の近くに、ひざまずいた。
君は、手を伸ばし、彼の手を握り、彼を自分の方に引き寄せた。
君の肉体は朽ちていた為、効果は桁外れであったが、君は、実行に移した。
君は、彼の目を覗き、そして、見つめた....

恐怖。

どうした?
彼は、決して君を恐れては居なかった筈だ。
今、何が彼を怖がらせている?

君は、彼に近づいた。
彼を抱きしめようとした。
彼にキスしようとした。
彼に、以前から言おうとしていた事、大丈夫だ、私はここだ、と言おう
とした。
だが、どれも君には出来なかった。
君の肺と声帯は朽ちていたので、恐ろしい声が出て来るだけであった。

その時、痛みが君を襲った。
君は、その痛みを覚えていた。
それは樹雷のエネルギーの痛み、かって、君が遥照に突き刺された時と
同じ痛みであった。
彼は、君を突き刺した剣を持っていた。そして、彼は、剣で君を突き刺
したのだった。
苦しさの為、君は、彼が理解できぬ事や、この出会いは故意では無かっ
た事を言う事が出来なかった。

君の知った全ては、君が愛した若者は....君の王子様になるべきだった、
君を自由にしてくれるべき筈だった....君を以前、打ち負かした同じ
武器を持っている、と言う事であった。
君は再び、傷つけられた。
今度は愛した人によって。
君の裏切られた、と言う気持ちが、君が抑制出来ない程に膨らんで
いった。

彼は走った。
彼は君から逃げて行った。
彼は君を恐れていた。
彼は他の人と同じであった。
彼にとって、君は、避けるべき化物でしか無かった。
悪い事に、彼は、君の敵と同類であった。
君は、彼と友達になれる、と考えていた。
だが、彼は敵の子孫に過ぎなかった。
君は、彼が愛してくれる、と期待していたが、その代わりに、彼は君に
多大な苦痛を与えた。
所で、その痛みは、君が良く知っているものの1つだった。
再び虐待された、と言う君の激しい怒りが煮えたぎっていた。

君は今、岩屋の外に出た。
700年ぶりの事で、君は、自然のエネルギーに取り囲まれていた。
君は、エネルギーを取り込み、自分の体を取り繕った。
君の気持ちは混乱していた。つまり、彼に愛して欲しいのか、彼を殺した
いのか、分からなくなっていた。
それで、君は急に、特別な戦闘服を用意した。
君は、それを身にまとい、君が望んだだけ、それを見せびらかす事が出来
たのだった。
君の気持ちがどうであれ、君は、新しい服を用意したであろう。

君は、学校の屋上で寝ている彼を見つけた。
彼が目を覚ますと、君は、彼の前に立ちふさがった。
君は、自分がどれだけ苦しみを受けたか、彼が分かっていると確信して
いた。
君は、彼と話をした。
彼は、君の嫌いな遥照に関係している、とは認めたが、自分のせいでは
無いとクレームを付けた。
彼の言葉は、君の気持ちを今尚、混乱させていた。

それで、君は彼を襲った。
君は、まだ、彼の事を全く考慮していなかった。
君は、まだ、彼を愛していた。
君は、まだ、彼を殺したくなかった。
疑いの影を超えたのを、君が確信すれば、彼が君の敵である事を認識で
きた。それは、君の信じたく無かった事であったが。
だが、君は彼があっちこっちに動くのを見るであろう。
そして、例え、君がどう物事を捉えようと、君は、どの様に彼を治療す
るか、どれだけ自分が怒っているかを、彼に分からせるであろう。

こうして、混乱し、男女入り乱れ、煮えきらず、コミカルで、破壊的な
アニメのシーンが始まったのであった。

<終わり−或いは始まり>